重要なお知らせ

 

校正用ファントムの変更に係るご案内

 

個人線量計の校正に使用するファントムに係るJIS規格「JIS Z 43311995(2002確認) X・γ線及びβ線個人線量計校正用ファントム」が改正され、平成1712月に「JIS Z 43312005個人線量計校正用ファントム」として発行されました。

 

従来のJIS規格では、X・γ線に対する個人線量計の校正用としてP-11)及びP-22)の二種類のメタクリル樹脂製ファントムが規定されており、個線協メンバー各社は、これらのファントムを使用して個人線量計の校正及び基本特性の取得等を実施しております。新たに発行されたJIS規格では、これらのメタクリル樹脂製ファントム(種類としてはP-40及びP-30の表現に変更)に加えて、「PW」としてISO 4037-3:1999に規定される水ファントム3)が追加されました。また、同規格では、9.使用方法の項において、「X・γ線及び中性子用個人線量計のレスポンスを求める場合には、PWを使用する。」と規定しています。

 

これに伴い、個線協メンバー各社では、線量算出式の基礎となる個人線量計のレスポンスを求めるために使用するファントムをPWに変更し、その見直しを図ってまいりました。来る平成18101日以降からご使用いただく個人線量計につきましては、新線量算出式を用いてHp(10)及びHp(0.07)の各線量当量を算出すると共に、これらに基づき算定した実効線量及び等価線量などを報告させていただきますことをここにお知らせいたします。

 

なお、水ファントム及びメタクリル樹脂製ファントムは、材質の違いから発生する後方散乱線の割合が互いに異なります。従って、ファントムを使用して校正する個人線量計は、後方散乱線の割合に応じて異なるレスポンスを示すことになります。これにつきましては、「ファントム変更に伴う報告値の影響について」を参照ください。

 

1)個人線量計装着面が40±1cmの正方形、厚さ15cmのメタクリル樹脂板

2)個人線量計装着面が30±1cmの正方形、厚さ15cmのメタクリル樹脂板
   3)個人線量計装着面が30±1cmの正方形、厚さ15cmで個人線量計装着面が壁厚2.5mm、それ以外の面が壁厚10mmのメタクリル樹脂板の水槽形ファントムに水を満たしたもの。

 

 

 

「ファントム変更に伴う報告値の影響について」

 

影響に関しては、高橋等の文献1)によると、計算シミュレーション手法において32keVから1250keVの光子に対する両ファントム表面位置の後方散乱線ファクターを求めた結果、水ファントムによる後方散乱線はメタクリル樹脂製ファントムに比べて少なくなる傾向を示すことが報告されています。同文献に掲載されている各ファントムの後方散乱線ファクターの図から読取ると、メタクリル樹脂製ファントムに対する水ファントムの後方散乱線の量は、32keVの光子に対して10%台、数十keV領域の光子に対して数%程度少なく、100keVを超えるエネルギー領域ではエネルギーの増加とともに両者の差は少なくなり、137Cs60Coγ線の領域では、ほとんど違いがなくなります。

個人線量計を水ファントムで校正した場合、低エネルギー領域では後方散乱線の割合が少なくなる分レスポンスが変わります。その結果、同じ量の放射線を受けた場合、算出される線量は変わる場合があります。(これらについては、当該JISの解説2)に詳細な説明がありますので参照ください。)

 

個線協メンバー各社が提供している個人線量計は、装着用クリップ等によりファントム表面から少し浮いた状態で校正されること、および独自の線量算出式を使用して線量を報告していること等により、先の文献によるファントム表面において得られた数値とは、多少異なる傾向を示す可能性があります。一方、中性子線量の算出においては、使用する中性子用検出子の種類、測定するエネルギー範囲及び算出方法の違い等により、ファントムの影響度がそれぞれ異なります。従って、これらの具体的な事項については、ご利用各社にお問い合わせください。

 なお、今回の校正用ファントムの変更は、β線の算出には特に影響ありません。

 
   1)高橋史明,山口恭弘:光子入射におけるファントム材質の後方散乱線への影響,Radioisotopes,52,94-97(2003)

   2) JIS Z 43312005,個人線量計校正用ファントム