トランペットカーブによる精度表示について


【許容される不確かさ】

放射線防護の基準とされるICRP(国際放射線防護委員会)の勧告1)では、個人線量計で測定された値の不確かさの許容レベルを次のように表しています。
   (1)対象とする線量限度に近い領域では、±どちらの方向についても係数1.5は許容できる。
   (2)記録レベルにおいては、許容し得る±100%の不確かさが含まれている。
 これを判り易く表すと、
   (1)線量限度レベルにおける測定値は、95%の信頼度において-33%+50%の範囲に収まるべきである。
   (2)記録レベルにおける測定値は、95%の信頼度において±100%の範囲に収まるべきである。
 と解釈することができます。先のICRP勧告では、記録レベルは1mSvを下回るべきではないとしていますので、個人線量計の着用期間を1月間とした場合の実質的な記録レベルは0.083mSv /回(1mSv/12)となり、現行の報告線量下限(0.1mSv)と同レベルとなります。また、線量限度に近いレベルとしては、一般的に線量限度と同じ桁数となる10mSv以上の線領域が対象となります。
 なお、この「不確かさ」とは、1990年代に入ってから利用され始めた、計測データの信頼性を表すための新しい尺度で、従来から用いられていた「誤差」や「精度」といった概念による表現の多様性を一元化するために定められたものです。個人線量計に対して使用される場合には、エネルギー特性、直線性、方向特性等に係る誤差をはじめ、あらゆる種類の誤差が含まれることになります。

【不確かさのスムージング】

先の不確かさの許容範囲から、検出下限(0.1mSv)領域と10mSv以上の線量域については、個人線量計に要求される性能が明らかになります。しかし、その中間の線量域に関する性能については特に規定がなく、このままではどこかの点(線量)を境にして性能が不連続になってしまいます。
 これを解決するために、IAEAの安全基準シリーズ2)等で提案されているのが不確かさの許容範囲を連続的に示す方法で、次のようになります。
   (1)記録レベルにおける不確かさの許容範囲を±100%とする。
   (2)10mSv以上に対する不確かさの許容範囲を-33%+50%とする。
   (3)記録レベルから10mSvの間の不確かさの許容範囲については、
     (a)許容範囲の上限値は、+100%から+50%に連続的に変化(減少)させる。
     (b)許容範囲の下限値は、-100%から-33%に連続的に変化(増加)させる。
 この方法で設定された不確かさの許容範囲は、図に示すような2本の曲線となります。この曲線の形が楽器のトランペットの開口部に似ていることから、トランペットカーブと呼ばれています。

トランペットカーブによる性能表示

不確かさにはあらゆる誤差が含まれることになりますが、少なくとも色々な放射線を様々な条件で照射した個人線量計から得られた測定値が、このトランペットカーブ上でどのように表示されるか確認することは、その個人線量計の実質的な性能を判断する上で大変役に立ちます。
 個線協では、皆様にご利用いただいている個人線量計の性能を一目でご理解いたき、個線協メンバー各社の測定サービスを信頼いただけるように、測定精度試験で照射した全ての個人線量計のレスポンス(Xγ線、中性子に関するもの)をこのグラフに示しました。


1)ICRP Publication 75

2) IAEA Safety Standard Series, Assessment of Occupational Exposure Due to External Sources of Radiation, Safety Guide No. RS-G-1.3